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  • 執筆者の写真seito

事業の再構築や新規事業の立ち上げについて考えてみましょう。(第2回:フィット・ジャーニーの視点から失敗事例を考えてみる)

更新日:2023年8月11日

今月は、我々がこれまでに経験・見聞してきた事業再構築や新規事業立ち上げの失敗事例について、フィット・ジャーニーの視点から考えてみたいと思います。



■ A社の事例

(1)独りよがりの事業計画

中堅企業A社は、顧客から請け負ったシステム開発を主業とするSystem Integratorです。請負ビジネスは受注ができなければ0、できれば100という0-100の狩猟型ビジネスであり、収益に大きな波があります。

かねてから収益の平準化を図りたいと考えていたA社はSaaS(Software as a Service)に着目し、サブスクリプション型サービス(以下、サブスク)事業へ乗り出すことを決定しました。


A社がSaaSによるサブスク事業に着目した主な理由は次の通りです。

想定されるA社のメリット

インターネット上で顧客にソフトウェアを定額で貸し出すことにより、毎月一定の利用料金を受け得ることができ、収益の安定・平準化を図ることが可能になる。

想定される顧客のメリット

自社で高額のソフトウェアを購入しようとすると、一度に多額の資金が必要になるが、サブスクであれば少額の資金負担でソフトウェアを利用することができる。

これらはA社が思い描いた画餅でしたが、A社はこれを事業計画に引き直し、顧客の声を聞く前に資金を投入して事業環境の構築を開始しました。顧客訪問を開始する頃には、開発はかなりのところまで進み、事業計画の説明を受けた顧客の反応は上々でした。

しかし、よく考えてみると、A社は顧客に事業の具体像を見せておらず、顧客はA社の画餅を見て当たり障りのない感想を述べていたのでした。この段階で、あえて正面からA社の事業計画に意見する顧客はいなかったのです。


(2)顧客の本音

事業計画はA社と顧客双方のメリットを強調した内容でしたが、実際に事業を立ち上げて運用する段になると、次の本質的な問題が顕在化しました。

A社の問題

A社は汎用的ソフトウェアを自社開発していないため、SaaSで提供する魅力的なソフトウェアを用意するには、ソフトウェア会社との協業が不可欠となる。しかし、A社と協業してサブスク事業への参入意欲を示す会社は極めて少数であり、協業への道のりは極めて遠かった。

顧客の問題

A社のサブスク事業には、自社が使いたいと思う有用なソフトウェアが用意されていない。また、インターネット環境の脅威が日々増していく中で、セキュリティ面において万全な対策が保証されておらず、データを社外に出してサブスクを利用することはハイリスクである。

実際に商談を進めていくと、それまで好反応を見せていた顧客から上記のような問題が次々と指摘され、A社はSaaSによるサブスク事業の難しさを痛感することになりました。

そうこうしているうちに時間とお金ばかりが費消されていき、結局、事業の立ち上げから1年を経過しても具体的な契約に至ることはできず、A社はやむなく事業を閉めることになったのです。


(3)フィット・ジャーニーの逆行

ここでA社の事例をフィット・ジャーニーの視点から考えてみます。

フィット・ジャーニーでは「カスタマー・プロブレム」がスタート点となります。つまり、顧客が抱えている、または顧客自身が気付いていない問題・課題(プロブレム)を見つけ、それに対する解決策(ソリューション)を追求していくことから、事業が始まっていくのです。そして、そのソリューションを実現するための製品・サービス(プロダクト)へと展開していきます。顧客のプロブレムに対応するソリューションとプロダクトでなければ、それは単なる思いつきに過ぎないのです。

A社のSaaSによるサブスク事業は「ソリューション・プロダクト」から始まっており、顧客のプロブレムに基づかないソリューションがプロダクト化されるという展開になっていたのです。プロダクトから逆引きして後からカスタマーを見つけ出す、または顧客を創り出すことは至難の業と言えます。資金力が豊富にある大手企業においても、手に余る大仕事となります。

フィット・ジャーニーを逆方向から始めて逆戻りしていくという進め方は極めて困難であり、流れに順行する場合とは比べものにならないお金と汗が必要になります。結果として、プロダクト・マーケット・フィットに至る確率は極めて低くなります。


次月では、A社はフィット・ジャーニーの流れに順行して、各フェーズでどのように行動していくことが望ましかったのかについて考えていきます。

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