前回はラーメン店(以下、R店)を採りあげ、損益分岐点を算出してみました。
その結果、R店は損失(赤字)の状態にあり、現在の1日あたり来客数50人に対し、さらに12人集客を増やさなければ損益分岐点に到達できないことがわかりました。

集客を増やすと言ってもたやすいことではなく、事業を開始する前に損益シミュレーショを繰り返し行っておくことが重要です。
特に出店の初期費用については、当初から高額の費用をかけてしまうと、回収リスクが高くなることが往々にしてあります。飲食店等の場合、前のテナントが退去すると、そのままの状態で次のテナントに引き渡されることがよくあります。日頃から情報網を張り巡らし、居抜き物件等を探していくことが効果的です。
R点が手頃な居抜き物件(家賃は15万円)を探すことができ、次のようにイニシャルコストを引き下げることができたと仮定します。

店舗運営のための運営費用(ランニングコスト)については、イニシャルコストと家賃が下がることから、固定費は次のようになります。

R店の1か月あたりの売上、食材費と広告宣伝費、そして両項目の合計である変動費を前回と同様とした場合、R店の1か月あたりの損益は次のように算出されます。

まだ損失(赤字)ではあるものの、損失額は前回の187,000円から97,500円へと下がります。これを前回の損益分岐点売上を求める算式に代入してみます。
S=91万円/(1-35%)
S≒1,400,000円
結果として、R店の損益分岐点売上高は1,400,000円に下がり、R店の1日あたりの損益分岐点売上高も56,000円に下がります。
ラーメンは1杯1,000円でしたので、R店は56杯のラーメンを売り上げる、即ち、あと6人集客を増やすことで損益分岐点に到達することができます。
手っ取り早く固定費を下げるために、人件費に手をつけようとする方がいます。R店は労働集約型の飲食事業であり、人の労働力に大きく依存しています。人件費削減の可否については、事業の業態をよく勘案した上で行うことが肝要です。
ここで、変動費にも目を向けてみます。
R店の変動費の構成は、以下の通りでした。
売上に対して5%の広告宣伝費が妥当であるのか否か、検討が必要と思われます。

賛否が分かれると思いますが、現在では無償のホームページ作成アプリが普及しており、広告宣伝費への代替策として効果的であると思われます。広告宣伝費を削減することで、変動比率を35%から30%へ下げることが可能になります。
当該アプリの使用について、最初は敷居が高いように思われます。しかし、直感的に使うことができるため、当該アプリに慣れると、自分たちの意向に合わせてアップデートしていくことが可能になります。

変動比率が下がることにより、R店の1か月あたりの損益は次のように算出されます。

依然として損失(赤字)状態が続いていますが、損失額は97,500円から35,500円へと下がります。また、変動比率30%を、損益分岐点売上を求める算式に代入してみます。
S=91万円/(1-30%)
S≒1,300,000円
その結果、R店の損益分岐点売上高は1,300,000円に下がり、R店の1日あたりの損益分岐点売上高も52,000円に下がります。ラーメンは1杯1,000円でしたので、R店は52杯のラーメンを売り上げる、即ち、あと2人集客を増やすことで損益分岐点に到達することができます。
ここまで変動費や固定費に着目し、損益分岐点の引き下げについて見てきました。
次回は売上に着目し、損益分岐点の動きを見てみたいと思います。
以上
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