「同一労働同一賃金」の法制化
働き方改革の一つの具体的施策に、「同一労働同一賃金」が掲げられています。
これは、同じ責任の程度や職務の範囲で働いている労働者間で、非正規だからとかパートタイマーだからとかという理由で待遇面で不合理な格差を設けるのをなくし、非正規労働者の能力や仕事ぶりが適正に評価され、意欲を持って働けるような社会をめざす考え方です。
現在(2018年5月)国会に提出中の「働き方改革関連法案」の中では、労働契約法の規定の一部をパートタイム労働法に組み入れ、パートタイム労働法の名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に改称し、職務内容、配置の変更範囲、その他の事情、の3要素を考慮し、不合理と認められる待遇の相違を禁止する内容を盛り込んでいます。
また、使用者に対して雇用時の待遇差の内容や理由を説明する義務が科される内容になっています。
正社員と非正規社員の待遇差の合理性が争われた事案
同一労働同一賃金の議論が進む中、実際に正社員と非正規社員の待遇格差が争われる訴訟が増えてきています。
●長沢運輸事件:定年退職後に再雇用されてから、定年前と同じ仕事を続けたときの賃金の引き下げが違法かどうかが争われた。
【第一審・東京地裁】仕事の内容が正社員と変わらないことを根拠に、定年前と同水準の賃金支払いを命令。
【第二審・東京高裁】定年後の賃金引き下げは、広く社会的に行われていることであり不合理ではないと判断。第三審の判決は6月の予定。
●九州惣菜事件:定年退職後、業務の範囲が限られ月収が75%減少するという不合理な労働条件の提示が違法であるかどうかが争われた。
【第一審】業務の範囲は定年前より限られ、時給額もパートと比べ不合理でないと判断。
【第二審】業務量の減少に伴い短時間勤務の提案に理由に理由はあるが、月収75%減少を正当化する合理性は認められないと判断。
●ハマキョウレックス事件:契約社員が、正社員に対して支給される賃金との差額、無事故手当、作業手当、給食手当等の諸手当及び正社員に認められる定期昇給、賞与、退職金の差は不合理であるとしてその違法性が争われた。
【第一審・大阪地裁】契約社員と正社員は人材育成の観点で立場が異なるとして、通勤手当以外の差を不合理とは認めなかった。
【第二審・大阪高裁】無事故手当や作業手当、給食手当等についても契約社員に対して不支給とすることは不合理な相違として労働契約法20条に違反すると判断した。
●日本郵便事件:正社員と契約社員の待遇の差が不合理であるとしてその違法性が争われた。
【大阪地裁】年末年始勤務手当(1日4000~5000円)や、住居手当(月最大2万7000円)の格差を不合理と判断した。「活保障給の性質があり、職務内容によって必要性が大きく左右されない」と述べ、不合理と認めた。
●日本郵便(東京)事件:正社員と時給制契約社員の待遇の差が不合理であるとしてその違法性が争われた。
【東京地裁】年末年始勤務手当、住 居手当、夏期冬期休暇及び病気休暇についての相違は、労働契約法 20 条に違 反するとして不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容された。
同一労働同一賃金ガイドライン案
Comments