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執筆者の写真藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

新型コロナウイルス感染症と労務管理のポイント

更新日:2020年12月11日

新型コロナウイルスの脅威はいまだ衰えることなく社会や経済を脅かしています。そこで今日は、会社の労務管理という視点で新型コロナウイルスに対応するポイントを説明します。



新型コロナウイルスが指定感染症に指定された

2020年2月1日、新型コロナウイルスが「指定感染症」に指定されたことが公表されました。この「指定感染症」とは、「感染症法」(法律で指定された感染症の感染拡大の防止や感染拡大時の国の措置が定められている)という法律を一時的に準拠させる必要がある感染症として国が指定する感染症のことです。感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの、という位置づけです。

​これにより、新型コロナウイルスにり患した者は、県知事の権限により就業禁止や強制入院の措置がとられることとなりました。



労働者が新型コロナウイルスに感染した場合

労働者が検査により新型コロナウイルスに感染したことが分かった場合、都知事の権限により就業禁止の措置がとられることがあります。

そうなった場合、会社は労働者を休業させるにあたって補償を行う必要があるのでしょうか。

答えは「いいえ」です。法律に基づき行われる就業禁止は「事業主の責に帰すべき事由による休業」とはみなされず、会社は休業手当を支払う必要はありません。

​ただし、この場合においては健康保険に加入している社員であれば「傷病手当金」が支給されることがありますので、会社としては傷病手当金の用紙を労働者に手渡しておくなどの周知をしておくことをおすすめします。


労働者が新型コロナウイルスに感染した疑いがある場合

まずは国が設置する相談窓口に相談し、窓口の案内に従って必要があれば医療機関の検査を受けさせましょう。

相談窓口は、各都道府県の保健センターなどに設置されてます。

会社は、法律上の義務はありませんが、万が一のことを想定して検査を受けさせるために必要な休暇(無給も可)を与えるよう配慮が求められます。

労働者が新型コロナウイルスに感染しているかどうか、具体的なことがわかるまでの間は自宅待機を命じても問題ありません。むしろ社内の混乱を避けるためにも自宅待機の措置をとること必要な場合もあります。


ただし、この休業は感染症法に基づく休業ではなく、あくまでも会社の自主的判断による休業となりますので、原則的には平均賃金の3分の2の休業手当を支払う必要が出てくることに注意が必要です。


新型コロナウイルスに関連して労働者を休ませた場合年休扱いとできるか

上記のようなケースで会社の自主的判断による休業措置をとった場合、この休業を年次有給休暇に振り替えることは可能でしょうか。

年次有給休暇は本来、労働者が指定する時期に与えるものですので、会社が年次有給休暇を一方的に振り替えることはできません。

ただし、労働者の判断により年次有給休暇を休業に充てることは可能です。年次有給休暇(通常の賃金が支払われる)の方が休業手当(通常の賃金の6割)よりも金額も大きいため、労働者に選択肢を示してあげるとよいでしょう。

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