• 藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント)

パートの年次有給休暇に支払う給与の額は?



年次有給休暇は正社員に限らず、パートタイマ―や契約社員などその名称に問わず、一定の要件を満たすと当然に付与される休暇です。

原則、従業員から申し出があれば理由問わず有給休暇を与えなければなりませんし、申出がなくとも5日は確実に取得できるよう時期を指定する必要があります。


有給休暇を取得した日は、月給制の方であれば賃金の控除対象とならずに通常の月給額が支払われ、時給制の方であれば一般的には時給×所定労働時間で算出した額を、有休手当として支払い問題なく処理ができている会社が多いと思います。



しかし中には日によって勤務時間が違う、もしくは勤務時間帯により時給が異なるというパートタイマーの方も多く、この場合の有給休暇を取得した時の給与計算についてご質問を受けることがよくあります。

このように、日によって勤務時間も時給も異なる場合、そのパートの年次有給休暇取得1日分の計算はどのように行ったらいいのでしょうか。




有給を取った際の賃金計算方法は3つの方法から選択する

有給を取得した際に支払われる賃金の計算方法は、労働基準法39条および労働基準法施行規則に定められており、この中から会社が選択した方法を就業規則に規定し定めることになります。


選択できる計算方法は以下の3つです。



①平均賃金

②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
一 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
二 日によつて定められた賃金については、その金額
三 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額
四 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額
五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額
七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額)

③標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(五円以上切り上げ)をその日の所定労働時間数で除して得た金額(ただし労使協定が必要)


現実には,②の「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」としているケースが圧倒的に多いかと思います。

この方法により月給制の正社員が年次有給休暇を取得した場合の賃金計算については、その日について賃金控除をせずに(その他の控除がなければ)満額支払えばいいので、計算が楽です。



しかし、冒頭の「日によって所定労働時間も勤務時間も異なる」という勤務形態のパートタイマーなどの有給休暇分の給与を算出する場合、「所定労働時間」は何時間なのか、有休手当のもととなる「通常の賃金額」はいくらなのか、という疑問が生じます。




日によって時給も勤務時間も異なるパートの有給手当の計算方法

上記のようなケースでも、原則は同じで上記①~③の中から最もぴったりくる計算方法を選ぶことになります。


もし、有休を取得した日に勤務するはずだった時間や時給が分かっているような勤務体系(例えば月曜日は1日4時間、時給980円、木曜日は1日7時間、時給1000円、というようにシフトがある程度固定されているケース)であれば、正社員同様②「所定労働時間勤務した場合に支払われる通常の賃金」を選択し、月曜日に取得した有給の手当は4時間×980円、などと計算が可能です。



一方で、シフトが固定しておらず、一か月単位で見ても勤務時間や時給がバラバラ(訪問ヘルパーさんなどに多いと思います)の勤務体系の場合は、「通常勤務した場合の通常の賃金」を算出することが困難なことがあるため、その場合は①の平均賃金を用いて有給休暇の計算をするのが向いているといえます。

ちなみに③の方法は、平均賃金と異なり毎回過去の支給額から計算を行う必要がないため、会社にとっては比較的楽な方法かと思いますが、社会保険に加入している従業員に限られますし、別途労使協定を取って採用しなければならない方法となりますので、③を計算方法としている会社は少数ではないかと思われます。



次に、平均賃金とはどのように計算されるのかを解説します。




①平均賃金の計算方法

年次有給休暇に支払われる賃金の計算に①均賃金を用いる場合、

「年次有給休暇を与えた最初の日以前3か月間にその労働者に支払われた賃金の総額」を、「その期間の総日数(就労日数ではなく、暦日数)」で除した金額が、一日あたりの有給手当の金額ということになります。

ただし、賃金が時間額や日額、出来高給で決められており労働日数が少ない場合など、総額を労働日数で除した額の6割に当たる額の方が高い場合はその額を適用することになります(最低保障額)。



【例】

有給取得日以前3か月間の総賃金(社保等控除前の支給額)=30万円

上記の期間の歴日数(8月、9月、10月)=92日

上記の期間の労働日数=50日


平均賃金=30万円÷92日=約3261円

※最低保証額=30万円÷50日×60%=約3600円


1日分の有給手当=3261円



過去3か月の平均の実績値から算出するため、不公平感が少なくなりそうですね。

有給の都度平均賃金を計算する必要がありますので、やや計算の手間はかかる方法といえます。




個別のケースごとに計算方法を都合よく変更することはできない

有給休暇を取得した時に支払われる賃金の計算方法は、労働基準法および労働基準法施行規則により①~③の方法より選択すると記載しましたが、これはあくまでも会社共通のルールとして就業規則に定める必要があります。


ある月には「通常勤務した時の通常の賃金」として計算し、別の月には「平均賃金」を算出して計算する、ということはできませんのでご注意ください。


勤務体系や賃金体系に応じて、例えば正社員は②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金 とし、パートタイマーは①平均賃金を用いる、などと実態にあった有休計算のルール作りをお願いしたいと思います。




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