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第21回:3C分析で繁盛店について考えてみる― 地方都市のパン屋から学ぶ事業再構築のヒント ―
筆者は人口約20万人の地方都市の出身で、実家はJR東海道線のある駅から車で約15分の場所にあります。駅前には商店街があるわけでもなく、典型的なモータリゼーション地域であり、住民の主な移動手段はマイカーです。 近隣の商店街は郊外型ショッピングセンターに取って代わられ、いずれもシャッター通りと化しています。生活必需品はショッピングセンターでほぼ揃い、さらにAmazonなどのオンラインサービスを活用すれば、日常生活に不自由することはありません。 そんな中、帰省中にウォーキングをしていた際、郊外のロードサイドにぽつんと建つ一軒のパン屋を見つけました。駐車場は7台分あり、周囲に競合店舗は見当たりません。しばらく観察していると、次々と車が出入りし、買い物客が途切れない繁盛店であることがわかりました。 後日、実際に訪れてみると、こじんまりした店内には多種多様なパンが並び、ガラス越しに見える工房では常にパンが焼かれており、焼きたての香ばしい香りが店内に広がっていました。価格は高すぎず安すぎず、手頃感がありました。 帰り道、「なぜこの立地でこのパン

s.takashi
10月5日読了時間: 3分


第20回:苦労して新規顧客を開拓したにも関わらず・・・その2
前回は、苦労して新規顧客を開拓したにもかかわらず、リピーターにつなげることができなかった残念な事例を紹介しました。今回は、筆者が最近経験した身近な事例を取り上げ、新規顧客の定着における課題についてさらに考察してみたいと思います。 筆者が利用するJRと私鉄の駅前には繁華街が広がり、多くの居酒屋が軒を連ねています。しかし、その多くは短期間で入れ替わっており、看板の交換作業を頻繁に目にします。一方で、長年営業を続ける老舗居酒屋も少なくありません。 夜になると、各居酒屋の前には従業員が並び、懸命に客引きをしています。しかし、老舗居酒屋では客引きを行っておらず、それでも多くの客(大半はリピーター)が自然と店内に入っていきます。 筆者は以前から、この違いは何に起因するのか疑問を抱いていました。そこで先日、友人とともに客引きに誘われるまま、ある新興の居酒屋に入ってみました。2時間ほど飲食した結果、その理由が明確になりました。 新興の居酒屋の特徴 店内には狭いテーブル席がぎっしりと並び、できるだけ多くの客を詰め込もうとする意図が見え隠れしていま

s.takashi
9月20日読了時間: 3分


第19回:苦労して新規顧客を開拓したにも関わらず・・・
事業を継続・拡大していく上で、新規顧客の開拓は欠かせない命題です。これができなければ、事業はやがて閉じざるを得なくなります。 しかし、せっかく苦労して新規顧客を獲得しても、一度きりの取引で終わってしまうケースが少なくありません。これは非常に残念なことです。 以前にも触れましたが、新規顧客の獲得には、既存顧客の維持に比べて約5倍のコストがかかるとされており、マーケティングの世界では「1:5の法則」として広く知られています。 新規顧客の獲得にコストがかかる理由 自社を知ってもらうために、広告や営業などの販促活動が不可欠である。 ゼロから信頼関係を築く必要があり、多くの時間と労力を要する。 飽和状態の市場では差別化が難しく、顧客獲得のハードルが高い。 既存顧客の維持が低コストである理由 すでに信頼関係が構築されており、過剰な販促活動が不要 顧客ニーズを把握しているため、密なコミュニケーションが可能 アップセルやクロスセルがしやすく、収益性が高まる こうした背景にも関わらず、新規顧客の維持を軽視し、ひたすら新規開拓に注力する企業が少なく

s.takashi
8月30日読了時間: 3分


第18回:老舗店と新興店の違いを考える
酷暑の続くある日、スタミナをつけようと鰻を食べることを思い立ちました。近所の老舗店のメニューを確認すると、うな重が一人前5,000円。気軽に手を出せる価格ではなく、諦めかけていたところ、「鰻の成瀬」(以下、成瀬)というチェーン店が、うな重を手頃な価格で提供しているという話を耳にしました。 インターネットでメニューを確認すると、並が1,600円、上が1,900円、特上が3,400円。これなら試してみる価値があると思い、早速暖簾をくぐってみました。 実際に食べてみると、並でも十分に美味しく、私の「うなぎ欲」をしっかりと満たしてくれました。この価格であれば、また気軽に訪れることができそうだと感じながら店を後にしました。 そのときふと、「老舗ではうな重が5,000円もするのに、なぜ成瀬はここまで安く提供できるのだろうか?」という疑問が頭をよぎりました。 調べてみると、その答えは成瀬の徹底した合理化にありました。 成瀬で使用されているのは、中国などで養殖されたニホンウナギ。これを冷凍で輸入することで、食材費を大幅に抑えています。 店舗では職人による手焼

s.takashi
8月12日読了時間: 3分


第16回:身近な事例での損益シミュレーション ー その2
前回はラーメン店(以下、R店)を採りあげ、損益分岐点を算出してみました。 その結果、R店は損失(赤字)の状態にあり、現在の1日あたり来客数50人に対し、さらに12人集客を増やさなければ損益分岐点に到達できないことがわかりました。 集客を増やすと言ってもたやすいことではなく、事業を開始する前に損益シミュレーショを繰り返し行っておくことが重要です。 特に出店の初期費用については、当初から高額の費用をかけてしまうと、回収リスクが高くなることが往々にしてあります。飲食店等の場合、前のテナントが退去すると、そのままの状態で次のテナントに引き渡されることがよくあります。日頃から情報網を張り巡らし、居抜き物件等を探していくことが効果的です。 R点が手頃な居抜き物件(家賃は15万円)を探すことができ、次のようにイニシャルコストを引き下げることができたと仮定します。 店舗運営のための運営費用(ランニングコスト)については、イニシャルコストと家賃が下がることから、固定費は次のようになります。 R店の1か月あたりの売上、食材費と広告宣伝費、そして両項目

s.takashi
3月8日読了時間: 3分


第15回:身近な事例で損益シミュレーションしてみましょう
前回までは損益分岐点について字面を並べて説明してきましたので、今回は身近な事例を採りあげて考えてみたいと思います。数字や算式が並びますが、なるべく平易に説明していきますので、お付き合いください。 私の家に近くに、とある賞を受賞したラーメン店(以下、R店)があり、品揃えはとてもシンプルで、自慢の一品をリーズナブルな値段で提供しています。お昼時になると行列ができているのをよく見かけますが、夜は閑散としているような印象があります。 仮にR店の商品構成を1杯1,000円のラーメンのみとします。ラーメンの一般的な原価率(麺、スープ、具材)は30~35%と言われていますので、ここでは麺が100円、スープが120円、具材が80円、原価の合計を300円とし、原価率を30%と仮定します。 出店の初期費用(イニシャルコスト)としては、次のような項目が想定されます。 また、店舗運営のための運営費用(ランニングコスト)としては、次のような項目が想定されます。 ここで、R店の1日あたりの来客数を50人、1か月あたりの営業日を25日とすると、R店の1か月あたり

s.takashi
2月4日読了時間: 3分


第14回:損益分岐点の引き下げ/収益構造の改善
今回は、前回お話した損益分岐点を踏まえ、どのように収益構造の改善を図る(利益を増やす)ことができるのかについて考えてみます。 収益構造を改善させることは、即ち、損益分岐点を引き下げることに他なりません。損益分岐点を引き上げるためには、大きく次の4つに分けて考えることができます。 l 販売価格を上げる。 l 販売数量を増やす。 l 固定費を削減する。 l 変動費を削減する。 では、それぞれについて見ていきましょう。 1.販売価格を上げる 費用が変わらない中で販売価格を上げることができれば、商品1つあたりの利益を上げることが可能になります。しかし、一方的に販売価格を上げてしまうと顧客離れが起こり、逆に販売数量が減ってしまうことになりかねません。結果として売上の増加につながらない可能性がありますので、十分に注意することが必要です。 販売価格を上げる時には、顧客が納得して値上げを受け入れてくれるような理由を提示することが重要になります。これまでに述べてきたいくつかのフレームワークやメソッドを使い、顧客が前向きに値上げを受け入れてくれるような商

s.takashi
2024年11月14日読了時間: 3分


第13回:損益分岐点
事業の再構築や新規事業の立ち上げに際し、利益( = 売上 ‐ 費用 )を出すことが重要命題になります。慈善事業でない限り、赤字のままで事業を継続することは許されず、黒字化がMUSTになります。 そこで今回は、事業の損益を考える上で、とても重要かつ有用となる損益分岐点について考えてみたいと思います。 損益分岐点の説明ではよく専門用語と数式を目にしますが、ここではイメージしてもらうことを優先し、図(グラフ)を使って考えてみたいと思います。以下に、6つのグラフ(①から⑥)を示します。 例として事務所や店舗の賃借料、人件費、水道光熱費、減価償却費等が挙げられます。 図②は変動費を表したもので、変動費は売上(販売数)に比例して変動(増減)し、例として原材料費や製造費、販売手数料等が挙げられ、売上がない場合は発生しません。 固定費と変動費を合わせたもの(図③)が、事業運営で発生する費用の総額になります。 利益を出すためには、売上が費用総額を上回っていることが必要になります。 売上については図④のように表すことができ、売上は販売数に比例し

s.takashi
2024年9月29日読了時間: 2分


第12回:魔の川、死の谷、ダーウィンの海
タイトルに耳慣れない3つの言葉が並んでいますが、これは『技術経営の考え方 -MOTと開発ベンチャーの現場から- 』(著者:出川通氏、発行所:光文社、2004年4月20日 第1刷発行)で提唱された概念です。 「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」は、企業の技術経営(MOT:Management Of Technology)における新技術の事業化を次の4つの段階に分け、ある段階から次の段階へと移行する際に立ちはだかる関門/乗り越えなければならない難しさを表した言葉です。 また、 「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」は、次のように定義することができます。 以上を踏まえ、MOTにおける「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」とフィット・ジャーニーの各フェーズの位置関係を図示してみると、概ね下図にように表すことができます。 フィット・ジャーニーとMOTは異なった対象を論じているように見えますが、上図のように両者の位置関係を考えてみると、ほぼ同じことに触れていることがわかります。あるフェーズから次のフェーズへの移行時に大きな関門が待ち受けており、その

s.takashi
2024年7月22日読了時間: 2分


第11回:SWOT分析と3C分析
前回は、孫子の兵法「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」になぞらえ、ファイブフォース分析により「彼を知り」得る(業界/市場における競争状況を明らかにする)ことが可能になることをご紹介いたしました。 今回は、「己を知れば」(自社の競争優位性を探る)のために有用となるSWOT分析と3C分析について考えてみます。 SWOT(スウォット)とはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を組み合わせたものであり、3C(サンシー)とは顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの頭文字を表したものです。図で示すと下掲のようになり、各々がどのようなものであるのか、何となくイメージいただけるのではないでしょうか。 SWOT分析と3C分析の目的は、概ね下表のように定義することができます。 SWOT分析と3C分析は異なる視点から企業の状況を分析しようとするフレームワークですが、似通っているところもあり、効果的な事業戦略の立案のために

s.takashi
2024年7月1日読了時間: 2分
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