働き方改革の一つとして副業を解禁する動きがありましたが、その副業者の労災の取扱について令和2年9月1日、労働者災害補償保険法の改正があります。
副業者の保険給付の算定基礎が合算される
これまでは、けがをした時や病気になったときに2つ以上の会社で雇用されている方であっても、保険給付の対象となる賃金は、事故を起こした事業所で受け取っている賃金のみを算定対象とされていました(下図左)。
9月1日以降にけがをした労働者は、この改正によりどちらかの会社で発生した労災事故による保険給付は、両方の会社における賃金額を合計した金額が算定対象となりますので、保険給付の額が増額されることになります(下図右)。
※対象となる給付は、休業(補償)給付、遺族(補償)給付、障害(補償)給付などとなります。
労災認定時、副業先の負荷も総合的に評価されることに
これまでは、複数の会社に雇用されている場合でも、それぞれの会社の負荷については個別に評価し労災認定できるかどうかが判断されていました。
今回の改正で、雇用されている会社のうち1つの会社における仕事の負荷(労働時間やストレス)を個別に評価しても労災認定できない場合は、雇用されているすべての会社における仕事での負荷を総合的に評価して労災認定できるかどうかの判断ができるようになりました。
働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響により、副業を解禁する企業も増えてきていますが、この改正により副業者の利益がこれまで以上に守られることになります。
なお、本改正により適用を受けることができるのは、「2つ以上の会社で雇用されている労働者」であり、ダブルワーク先が自営業やフリーランスである場合は、合算の対象に含まれないことに注意が必要です。
(自営業者やフリーランス、個人事業主は一定の業務で特別加入しない限り労災保険の対象にはなりません)
高齢者の就業機会の確保及び就業の促進
現行の法律においては、60歳以上の定年、及び65歳までの継続雇用措置や定年の引き上げ等の雇用確保措置が事業主に義務付けられているところですが、今回の改正でさらに70歳までの「就業確保措置」が努力義務として規定されることになります。
具体的内容は以下の通りです。
①65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務化【令和3年4月施行】
就業確保措置とは具体的に、
・定年引上げ
・継続雇用制度の導入
・定年廃止
・労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度
② 高年齢雇用継続給付の縮小【令和7年4月施行】
令和7年以降は、60歳以降の再雇用時の賃金低下を補足する雇用保険の高年齢雇用継続給付を縮小し、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の導入等に対する支援を雇用安定事業に位置付けることとなります。
当面は努力義務に留まりますが、いずれは努力義務から義務化へと改正される可能性が十分にある部分です。
今のうちから超高齢化社会における労働力確保策の一つとして、高年齢者が活躍できる制度や仕組みの検討が必要となるでしょう。
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