女性管理職は育児短時間制度を利用できるか
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  • 執筆者の写真藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

女性管理職は育児短時間制度を利用できるか

更新日:2020年5月13日

例年、比較的4月に多い「育休復帰」。

育休復帰後どのように働くか、また働かせるかということは会社にとっても労働者自身にとっても重大なテーマです。


育児介護休業法では、3歳になるまでの子を養育する一定要件を満たす労働者が申し出た時には、所定労働時間を短縮する制度(いわゆる育児短時間制度)を利用させなければならないこととなっています。


実際、育児中の労働者の皆さんは利用されている方は多いのではないでしょうか。


「短時間」というのは具体的に、所定労働時間を原則6時間以下とする制度である必要があります。

一般的に、フルタイム労働者が育児短時間勤務制度を利用して、5~6時間勤務とするケースが多いでしょう。


今回は、同じ育児中の社員であっても「管理職」の女性が短時間勤務制度をとったときの労務管理上の注意点について解説します。



そもそも「管理監督者」は労働時間の制約を受けない

管理監督者とは、労働基準法上、経営と一体的な立場にたって業務を遂行する労働者のことをいいます。

自ら管理監督的地位に立ち経営的な裁量を持って働く労働者であるので、使用される立場として労働時間を管理される労働時間法制は馴染みません。


ですので管理監督者は、労働基準法に定める法定労働時間(1日8時間1週間40時間)や休憩、休日の規定が適用されません。

管理監督者は1日10時間働こうが休みなしで働こうが、法律違反にはならないのです。

(労働時間法制の制約を受けないというだけで、長時間労働による過労対策など、管理監督者を安全に働かせる企業としての安全配慮義務は免れません)


ただし、管理監督者に該当するかどうかは、単に役職上の肩書が「リーダー」「管理職」「課長」などであればよいというものではなく、「管理監督者として適当な手当が支給されているか」「労働時間を管理されていないか」「一定の人事権が付与されているか」などの実態を勘案し、「経営と一体的な立場に立って業務を遂行する者といえるかどうか」が個別に判断されるものであることに注意が必要です。



管理監督者は短時間制度が利用できるか

さてこの「管理監督者」的立場にある女性が、育児短時間制度を申し出た場合どう取り扱うべきでしょうか。


原則は、上記で述べた通り労働者の求めに応じて所定労働時間の短縮の措置をとる義務がありますが、管理監督者はそもそも決められた労働時間を決められた通りに勤務する働き方には馴染まないことは前述しました。


結論として、労働時間を自ら管理できる立場であることから、育児短時間勤務制度を認める必要はないといえます。


ただし、育児中の管理監督者への配慮として一部の管理監督者の役割を外す(もしくは分業する)、長時間労働になりすぎないよう気を配るなどの措置をとるなどの対応を個別に柔軟に検討することが、会社の女性活躍を促進することになるであろうことは言うまでもありません。



育児介護休業等を理由とする不利益取り扱いは禁止されている

一方で、時間の制約がある中で管理監督者としての業務の遂行が困難になる、実態として管理監督者としての性質がなくなってしまう、ということが現実的に起こるのであれば、当然にその地位を管理監督者から通常の法律の適用を受ける労働者に変えるという選択肢も出てくるわけです。


ただし留意点として、育児介護休業法においては、妊娠・出産・育休等を理由として不利益取扱をすることが禁じられていることが挙げられます。


「不利益取扱い」の中には、労働者が短時間勤務制度の申し出をしたことやその適用を受けたこととの間に因果関係がある行為をいい、解雇、降格、不利益配置変更などが挙げられます。

したがって実際に女性管理監督者が育児短時間勤務制度の対象にならなかったとしても、その申し出があったことを直接の理由として降格や配置転換などは原則できません。



また仮に降格(役職を解く)を行う場合は、単に「育児中であるから」などという理由ではなく、管理監督者の役割、業務内容を勘案した時にその役割や業務範囲を担うことが可能かどうか、サポートする手段は尽くしたか、過去の降格事案と比べてみてこの降格が相当といえるかどうかなどという現実的な点を考慮した上で管理職としての役職を継続させるのか一部変更するのか、はたまた降格させるのかなどを検討する必要があります。




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