• 藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント)

過半数代表の選出方法に問題があり36協定が無効になる?

2022年、ある会社が従業員に対して違法な時間外休日労働を行わせたとして、同社の労務管理責任者を労働基準法第32条(労働時間)と35条(休日)違反で書類送検されました。



時間外労働数は月に100時間超え、法定休日労働も確認されたようです。

この会社では36協定が届け出ていましたが、協定当事者となった従業員は36協定の内容を理解しておらず、また会社から一方的に選出していたため「民主的な方法で選出されていなかった」として、協定は労働基準監督署により無効と判断されました。






問題発生後、36協定が無効扱いとなることも


今回のケースのように、すでに労働基準監督署に届け出られている36協定であっても、何か問題が発生したり、監督署による立ち入り調査があった場合は、その締結手順を含めて適正に協定が運用されているかが確認され、その有効性が否定されることがあります。


その他のケースでは、経営者の親族が従業員の過半数同意を得ることなく代表者となっていた、また過半数代表の選任手続が適正でなかった(会社指定の方に慣例的に特定の方をお願いし、社員がそれを把握していなかったなど)、そして労働組合が協定当事者となっていたものの、実際はこの労働組合は会社の過半数を組織していなかったなどにより、36協定の有効性が認められないケースがあります。


監督署の受付印が押されたので問題なし、とは言い切れない点に注意が必要です。

今一度、過半数代表者の選任手続きが適正かどうかを確認していただければと思います。





従業員の過半数代表者の選出手続きは慎重に


協定当事者となる従業員は、36協定を締結する代表者を選出する旨を明らかにして実施された民主的な方法で、従業員の過半数の同意を得て選出されなければなりません。


なぜなら、当該過半数代表者は会社の全従業員を代表して36協定などの重要事項を会社と協議する立場にたつ者であり、会社が指名した者が代表となってしまうと、会社側の意向が強く反映され労使間の適切な協議が機能しなくなくなる可能性があるからです。


この全体の従業員数の中には、パートタイマーなどの非常勤職員、管理監督者も含まれます。




選出手続は、労働者の過半数がその人の選出を 支持していることが明確になる民主的な手続(投 票、挙手、労働者による話し合い、持ち回り決議) がとられている必要があります。



具体的には、36協定の締結時には朝礼等で協定主旨や代表者の役割を説明し、立候補者をつのり、立候補者がいない場合には持ち回りや推薦でどなたか一人を指名、この選出に同意できるか方に挙手等をしてもらい人数を確認しておいてもらいます。


その後、できれば全従業員に当該従業員を36協定当事者として選出することに同意するかどうかの選択式回覧板や投票フォームを作成するなど、全従業員の過半数同意の確認は慎重に進めるようにしてください。もちろん、個々の従業員の意志を尊重し「同意しない」という欄も選択できるように記載しておきます。


こうすることで、過半数の同意が得られているかどうかを明確に確認できますし、客観的資料としても適正に過半数代表者を選出しているという証拠を残すことができます。






協定締結後は、周知が必要


従業員の過半数同意がとれて、代表者との協議・協定締結が済み、労働基準監督署に届け出て一安心・・では足りません。


労働基準監督署に届け出た36協定は労働者に周知しなければなリません。

周知しなかった場合、労働基準法第106条違反となってしまいます(30万円以下の罰金)。


例えば常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける ・書面を労働者に交付する ・磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、 各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する、などの方法が考えられます。



実務上は、就業規則等、他の周知用書類と一緒に格納ラックを決めておき、鍵をつけずに収納場所を周知する。

その他、全社員が共通で見られるインターネット上の社内掲示板にアップロードしておく、というような方法が見られます。



せっかく適正に36協定が作成されていても、周知がしっかりとされていなければ協定の有効性が否定されかねません。

年に一度行う36協定の更新手続きは少し面倒に感じるかもしれませんが、あとあと残業の違法性が指摘されないためにも、更新手続は慎重に進めていただければと思います。