次々に緩和が公表されていく雇用調整助成金。
とてもありがたいことなのですが、申請担当者や事業主は情報集めに翻弄されていることかと思います。
そこで今回は雇用調整助成金の特例を時系列を追って確認していきたいと思います。
本来(原則)の雇用調整助成金の主な要件
雇用調整助成金は、今回のコロナに限らず、事業主が経営上の理由により従業員の雇用維持を図るために休業させた場合の賃金助成の制度として役割を果たしています。
本来の雇用調整助成金は制度は大まかにこのような制度です。
①直近3カ月平均の売り上げなどの生産性を示す指標が10%以上低下していること(生産量要件)
②雇用保険被保険者数や派遣労働者が前年同月比5%かつ6名以上増加していないこと(雇用量要件)
③休業に入る前に休業(教育)計画や休業(教育)協定書を労働局に提出すること
④休業や教育訓練実施後2か月以内に支給申請を行うこと
⑤助成率は2分の1(中小企業においては3分の2)
1月24日から7月23日までの期間コロナの影響を受ける事業主の特例(2月14日施行)
令和2年1月以降コロナウイルス感染症拡大により経営に打撃を受ける会社が出始めたことに伴い、2月14日、雇用調整助成金の特例が施行されました。
2月14日に設けられた特例は順次改正され、現在は以下のようにまとめられます。
①対象期間の初日が1月24日~7月23日であれば生産性要件の比較期間を3か月から1か月に短縮
②生産性指標の比較月の前年同月比を、直近一年間のうち任意の1か月に読み替え可能。
③対象期間の初日が1月24日~7月23日の間であれば雇用量要件を適用しない
④6月30日までに計画届を提出すれば事前に届け出をしたとみなす
⑤連続していない判定基礎期間の申請の場合であっても初回の計画届の提出に合わせて支給申請を提出でき
⑥計画届の事後提出をした場合、支給申請の期限は計画届の提出をしてから2か月以内とする。
⑦対象期間の初日が1月24日~7月23日までの休業は支給日数の上限なし
⑧雇用保険取得6か月以内の労働者も対象とできる
⑨コロナの影響を受ける特例事業主はクーリング期間の特例は適用しない
⑩部門等単位の一部休業が可能
⑪休業規模要件を30分の1(中小企業は40分の1)とする
⑫コロナの影響を受ける特例事業主は残業相殺の廃止
⑬労働者選任届、委任状は省略可
⑭賃金台帳は給与明細等で可。ただし休業手当の額が通常の賃金と同額の場合以外は、休業手当と分けて記載されていること
⑮2回目以降も申請時には重複する添付書類の省略可
⑯中小企業事業主である場合の添付書類の省略可
⑰緊急雇用安定助成金と同時申請の場合、重複する書類は省略可
⑱計画届は2回目以降省略可
4月1日から6月30日(緊急対応期間)の特例(4月10日施行)
コロナの影響が長引く中、雇用調整助成金の更なる拡充として要件等がさらに緩和されました。
①対象期間の初日が緊急対応期間にある場合の生産量要件は5%以上の減少とみる
②緊急対応期間中は限度日数100日とは別に上限なく利用できる
③緊急対応期間中は助成率が3分の2(中小企業は5分の4)にアップ。ただし判定基礎期間ごとに雇用維持要件を満たす場合は、4分の3(中小企業は10分の9)に読み替え
※雇用維持要件とは、判定基礎期間の末日において、労働者と受け入れ派遣労働者の数が、1月24日から判定基礎期間の末日までの各月の平均と比較して5分の4以上であること。また解雇を行わないこと。
④緊急対応期間中の教育訓練の緩和(自宅での自社職員による研修OK、自宅での新入社員研修や管理職研修OK、自宅での片方向研修OK、過去実施と同一の訓練OK、マナー研修やパワハラ研修OK)
⑤緊急対応期間中教育訓練を実施した場合の上乗せ額は1800円(中小企業は2400円)。
⑥緊急対応期間中は風俗営業等関係事業主も雇用調整助成金の対象になる
⑦緊急対応期間中は労働保険滞納、労基法違反事業主も雇用調整助成金の対象となる
判定基礎期間が4月8日から6月30日までの期間(中小企業特例1期間)を含む中小企業の休業にかかる特例(5月1日施行)
更に緊急事態宣言に伴い、助成額の拡大の特例が施行されました。
①休業手当60%を超えて支給した割合分の助成額は10分の10とする。
ちなみに、判定基礎期間が3月21日から4月20日である場合など、一部の期間は特例の対象にかからない場合であっても、その判定基礎期間(3月21日から4月20日)の全期間を通して10分の10で計算される取扱いになっています。
知事による使用停止、営業短縮要請を受けた期間(中小企業特例Ⅱ期間)を含む中小企業の休業にかかる特例(5月1日施行)
①その要請を受けた場合、100%の休業手当を支払うか、基準賃金額が8330円以上となっている場合の助成率は10分の10とする。
5月14日、更なる緩和が発表
雇用調整助成金に関して更なる緩和として、「計画届の提出省略可」「助成額算定の簡素化」「平均賃金算定方法の簡素化」が公表されました。
計画届省略に伴い生産性要件をどこで見るかなど、詳細なことは支給要領が公表されてみないと分かりませんが、千葉労働局に確認する限り、計画届が不要になった場合の生産性要件は、初回支給申請時の前月と、前々月以前の任意の1か月(直近1年以内で雇用保険被保険者が在籍する月)となる可能性が高そうです。
要領が公表されましたらこちらでお知らせしたいと思います。
※弊事務所では申請代行の依頼を承っていますが、それ以外で個別に助成金についてご質問にお答えすることはできません。助成金については労働局の職業対策課までお問い合わせください。
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