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70歳以上の厚生年金保険・健康保険の手続と、年金制度との関連とは?

執筆者の写真: 藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

一般的に定年年齢は60歳~65歳が多いですが、最近は年齢に関係なくバリバリとお仕事をされる方も増えてきました。


ですが保険制度の切り替えや在職老齢年金の絡みもあり、70歳以降における社会保険(厚生年金保険と健康保険)の手続については、少々ややこしいものとなっています。


今回は、社会保険に加入しながら働いている従業員が70歳~75歳になった時の手続について解説します。








厚生年金は65歳から受給開始し、厚生年金保険の被保険者資格は70歳に到達した時に喪失する


厚生年金保険は一般的には65歳から受給が開始されます。

今は65歳になってもフルタイムで働く方は多いので、厚生年金をもらいながら同時に厚生年金保険に加入している、というケースがよくあります。




在職老齢年金とは


現在の年金制度においては、厚生年金を受給している人が、フルタイム(もしくは週30時間以上など厚生年金被保険者要件を満たす形で)で働いているために勤務先で厚生年金に加入している時は、報酬額や賞与額の大きさに応じて、厚生年金がカットされる仕組みがあります。


これを「在職老齢年金」といいます。



厚生年金保険の被保険者資格は70歳到達時に喪失しますが、

在職老齢年金による年金カットは一定の場合、70歳以降についても続いていきます。



資格喪失日(70歳の誕生日の前日)の属する月から厚生年金保険料は徴収されないようになります。

給与計算の際は、厚生年金保険の控除処理を誤らないようご注意ください。






「70歳以上被用者」とは


70歳以降の在職老齢年金の仕組みを理解しようとする際には

「70歳以上被用者」という言葉の意味を押さえておく必要があります。



※ ※ ※ ※ ※


70歳に到達した際は厚生年金保険の資格を喪失するといいましたが、

70歳以降の勤務パターンは以下の3パターンに分けられます。



①70歳以降も、働き方を変えずに正社員の4分の3(おおよそ週30時間)以上勤務する

②70歳以降は、正社員の4分の3(おおよそ週30時間)未満に変更して勤務をする

③退職する

上記①のように、厚生年金保険の被保険者資格は喪失をしたものの、70歳以前とほとんど働き方を変えない人がいます。

こういった方は「70歳以上被用者」と呼ばれ、例え厚生年金保険の被保険者資格を喪失していても引き続き在職老齢年金による厚生年金カット額の対象となってしまいます。



70歳以上被用者となるための手続は特にありません。特段何も手続しなくても、年金機構で自動的に厚生年金被保険者資格の喪失と、70歳以上被用者該当処理が行われます。



70歳以上被用者については、70歳到達前と同様、標準報酬月額(相当額)の随時改定や算定基礎届を年金事務所に提出する必要があります(その届出により厚生年金カット額が決まります)。







70歳以上被用者に該当しない場合


一方で、②と③のように、70歳以降は勤務時間を短くしたり退職するなどして働き方を見直す人もいます。


これらの場合は、70歳到達により厚生年金の被保険者資格を喪失し、かつ「70歳以上被用者にも該当しない」ことになります。

70歳以上被用者に該当しなければ、在職老齢年金により厚生年金がカットされることもありません。



手続上は「被保険者資格喪失届 70歳以上被用者不該当届」を年金機構に対して提出することになりますが、「70歳以上被用者不該当」にチェックを入れるのを忘れないようにしてください。


日本年金機構「従業員が死亡、退職したとき」




75歳になると、健康保険の資格を喪失する


続いて従業員が75歳になると、後期高齢者医療制度に移行するため会社で加入していた健康保険は喪失となります。

75歳到達前までに、会社宛てに健康保険から「資格喪失届」が送られてくると思いますので

忘れないように処理をしてください。





資格喪失日は、75歳の誕生日


資格喪失届には、資格喪失日を記入します。


「75歳に到達した日の翌日」が資格喪失日になります。

少しややこしいですが75歳に到達する日は誕生日の前日ですので

結果的に75歳のお誕生日が資格喪失日となりますです。



※なお70歳到達により厚生年金保険の資格を喪失する日は「70歳の誕生日の前日」となっています。

日本年金機構「従業員が70歳になったときの詳細説明」


資格喪失日の属する月の保険料はかかりません。


すなわち、お給料を計算するときは、75歳の誕生月の健康保険料から控除をゼロにする、ということを忘れないようご注意ください。

健康保険料を翌月の給与から控除しているのか、当月の給与から控除しているのかは会社によって異なります。給与は翌月支払いの会社は、75歳の誕生日の翌月から健康保険料の控除をゼロにするのが一般的です。





75歳到達時の健康保険資格喪失届には、「70歳以上被用者」に該当するのか・しないのかのチェックをお忘れなく


75歳での健康保険被保険者資格喪失届はさほどややこしくはないのですが、

「厚生年金保険」にかかる「70歳以上被用者」に該当するか否かのチェック欄への記入漏れには気をつけましょう。



75歳以降、退職する又は勤務時間を週30時間未満に減らして勤務する場合・・「70歳以上被用者不該当」にチェック。


75歳以降、変わらずフルタイム(または週30時間以上)で勤務する場合・・「70歳以上被用者不該当」にチェックは入れない。 

※この場合は引き続き、一定の要件を満たす場合に在職老齢年金による年金カットの対象となります。






75歳到達者の、健康保険の扶養家族の手続もお忘れなく


従業員が75歳に到達したことにより健康保険の資格を喪失すると、

その従業員に扶養されていた家族の健康保険証も当然利用できないようになります。


そのため扶養家族ご自身が、国民健康保険に加入するなどの手続が必要です。

この場合、扶養家族が65歳以上75歳未満であれば、申請により国民健康保険料の軽減が受けられます。


扶養家族の健康保険の手続についてはつい忘れてしまいがちなので

できれば、従業員の75歳の資格喪失手続の際に一緒に案内してあげると親切かもしれません。

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