賞与をめぐる非正規労働者との格差判決

同一労働同一賃金について規定したパート・有期労働法が改正された2020年4月から6か月。

正規社員と非正規社員の待遇をめぐる、2つの最高裁の判決が10月13日にありました。


今回はそのうち一つの「大阪医科薬科大学事件」について取り上げます。


パート有期労働法では、同一労働同一賃金の原則が規定されている

パート有期労働法は、2020年4月から大企業について改正法が適用されています。

(中小企業は2021年4月から適用)


パート有期労働法では、パートや有期雇用労働者の待遇について、通常の労働者の待遇との相違は、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組みや運用など)、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない旨を規定しています。


パートや有期雇用労働者と、正社員の間に職務内容の違い、人材活用戦略の違いなどという違いがある場合まで、待遇差を禁止しているものではないことに注意が必要です。



非正規労働者の賞与の扱いは(大阪医科薬科大学事件)

アルバイトとして3年間勤務していた女性が、正社員との待遇について不合理な差があったとして争った事件です。


具体的には、アルバイトの賃金は、年収にして他の基礎系研究室で就労する正社員の約三分の一でしたが正社員と職務内容は同じであり、配置転換についてもアルバイト職員にも命じる旨の規定がありました。

ただ、実際は業務の内容を明示して採用されていることもあり、原則として業務命令によって他の部署に配置転換されることはなく、人事異動は例外的かつ個別的な事情によるものに限られていたようです。


一審においては原告の請求は全て棄却されましたが、二審の大阪高裁判決においては、賞与、夏期特別有給休暇、私傷病欠勤補償について、アルバイトを対象外とすることは不合理であるとしていました。


今回判決のあった最高裁では、賞与と私傷病欠勤補償についてのみ審理の対象となっていましたが両方について不合理な格差とは言えないと判断しました。



判決のポイントは

①正社員の業務の内容の難度や責任の程度が高く、人材の育成や 活用を目的とした人事異動が行われていたもの正職員の賃金体系や求められる職務遂行能力及び責任の程度等に照らせば、大学は正社員 としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、正職員に 対して賞与を支給することとしたものであった

②アルバイトについては、原則として業務命令によって配置転換されることはなく、人事異動は例外的かつ個別的な事情により行われていたものであり両者の職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違 があったといえる

正社員の業務をアルバイトに置き換えていたため、業務の難易度に差がある


④私傷病欠勤補償は、正職員が長期にわたり継続して就労し、又は将来にわたって継続して就労することが期待されることに照らし、正社員の生活保障を図るとともにその雇用を維持し確保するという目的によるものと解される。この目的に照らすと私傷病欠勤補償は正社員の雇用を維持し確保することを前提とした制度であるといえる。


とし、賞与、および私傷病欠勤補償の不合理性を否定しました。


判決を受けて企業の労務管理に活かすために

今回の判決では、賞与、私傷病欠勤補償それぞれについてその支給目的を丁寧に整理することで、不合理性を判定しています。


パート有期労働法では、パートや有期雇用労働者から待遇差について説明を求められたらそれに対して説明をする義務が企業に課されています。


今回の判決は、非正規と正規労働者との賞与や休職制度の待遇差について整理する時の参考になるのではないかと思います。

もちろん、それぞれの制度には企業なりの考えや意図があってのことでしょうから、そこを無視して判例に合わせていく必要はありません。


次回は、非正規労働者と正規労働者の退職金の違いについて争われたメトロコマース事件について触れたいと思います。


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