複数の会社で社会保険に加入するときの事務手続のポイント
- 藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

- 7月15日
- 読了時間: 4分
複数の会社で社会保険に加入する場合の手続きとは?
副業・兼業の普及により、複数の会社で働くケースが増えています。
いずれの会社でも社会保険の加入要件を満たす場合、「二以上事業所勤務者」という特有の手続きが必要になります。

それぞれの事業所で社会保険の加入要件を満たした場合、各事業所で「資格取得届」が提出され、それぞれで被保険者となります。
そのうえで、本人が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届(いわゆる二以上事業所勤務届)」を提出し、主たる事業所を選択することになります。
この届出により、各事業所の報酬月額を合算して標準報酬月額が決定され、保険料は各事業所の給与額に応じて按分されます。
そうして決定された保険料額は、年金事務所からそれぞれの事業所へ郵送される「二以上事業所勤務被保険者決定および標準報酬決定通知書」という書類により通知されます。
二以上の事業所で勤務する方の保険料の決定は、通常とは別のプロセスを踏むことになりますので注意が必要です。
給与計算時には、必ずこの「二以上事業所勤務被保険者標準報酬決定通知書」に記載された保険料から、本人負担分の保険料を計算してあげてください。
通常、こちらの決定通知書が届くまでは届を出してから1カ月半~2カ月程度がかかります。
そのため初回給与計算に間に合わない可能性があり、その場合はいったんは通常通りの保険料で給与天引きをし、後日通知書に記載された保険料との差額を精算するという方法を取らざるを得ないでしょう。
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二以上事業所勤務者の扶養手続き
健康保険の被扶養者は選択事業所側で管理されるため、原則として扶養の届出は選択事業所でのみ行います。非選択事業所では改めて扶養手続きを行う必要はありません。
一方で、選択事業所がもう一つの会社に変更になった場合などは、改めて選択事業所で扶養届の提出が必要となるため注意が必要です。
資格取得届と二以上事業所勤務届を提出した後の流れ
実務上重要なのが「その後の流れ」です。
通知を受けた各事業所は、按分された保険料に基づき給与から控除し、日本年金機構へ納付します。
つまり、保険料は一つの会社ではなく、それぞれの会社で分担して支払う仕組みになっています。
さらに、資格取得後の各種手続きにも特徴があります。
例えば、算定基礎届は、各事業所が自社で支払った報酬のみを記載して提出します(届出書の「二以上勤務」に〇をつけます)。
また、報酬に変動があった場合の月額変更届(随時改定)については、各事業所ごとに要件(通常は2等級以上の変動)を満たすかどうかを判断します。例えば一方の会社のみで大きく昇給があって等級が2等級以上変動すれば、その会社だけが月額変更届を提出することになります。
二以上事業所勤務者の賞与にかかる保険料
二以上事業所勤務届を提出している方に賞与を支給したときも、通常の手続きと同じように「賞与支払届」を提出します(届出書の「二以上勤務」に〇をつけます)。
すると、後日同月内にもう一つの事業所で支払われた賞与と合算して保険料が決定され、「二以上事業所勤務被保険者標準報酬賞与額決定通知書」という書類が日本年金機構より郵送されます。
ただ賞与支払届が提出してからこの決定通知書が届くまでは若干のタイムラグがあるため、賞与の計算時において支給賞与額からいくら保険料を控除しておけばいいか分かりません。
実務的には、いったんは通常通り賞与にかかる保険料を計算し控除し、後日「二以上事業所勤務被保険者標準賞与額決定通知書」に記載された保険料との差額を精算する、という二段階の方法を取るというのが実務上の流れかと思います。
このように、二以上事業所勤務者の社会保険手続きは通常の手続きよりも複雑です。
従業員本人だけでなく、各事業所の担当者も仕組みを正しく理解し、連携して対応することが求められます。
副業時代においては、こうした制度の理解がトラブル防止につながりますので、早めの確認と適切な手続きを心がけましょう。
※本記事に関する個別のご質問は受け付けておりません。
※本記事は正確性には十分配慮しておりますが、内容の完全性や最新性を保証するものではありません。具体的な手続きや取扱いについては、必ず管轄の年金事務所へご確認ください。


