メンタルヘルスケアの具体的な進め方
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  • 執筆者の写真藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

メンタルヘルスケアの具体的な進め方

皆さんの会社で、突然会社に来なくなった方がいて、だれが、どう対応したらいいのかわからず慌ててしまったという経験はありませんか?



職業生活でストレスを感じる労働者の割合は6割近くにもなり、また精神障害等による労災認定件数も増加傾向にあります。そんな中、こころの健康対策に取り組んでいる事業場は平均して58%、50人以下の事業場で50~60%という割合となっています。

労働者の職業生活に基づくメンタル不調者を放置していることは、職場の安全配慮義務違反に問われかねない事態です。



そこで、今回はこころの健康不調を訴えてきた労働者に対してしっかりと対応できるよう、またメンタル不調を未然に防ぐため、メンタルヘルスケアの具体的進め方について解説します。



メンタルヘルスケア具体的な進め方の流れの全体像

メンタルヘルスケア体制の構築は、大きく「予防策」と「対応策」に分かれます。


以下では予防策・対応策別に取組の具体的な内容を見ていきます。



​【予防策①】メンタルヘルスケアを推進のための教育研修・情報提供

まずは労働者・そして管理職に対して「メンタルヘルス不調は誰にでも起こりうる事態であり、個人で抱え込まない重要性と相談体制の存在」の認識を広げる必要があります。

メンタルヘルス不調はどうしても労働者の固有の特性としておこるものという認識がありがちですが、そうではなくメンタルヘルスケアを組織全体の問題としてとらえることが重要です。

そのためにも、

【労働者に対して】ストレスへの気づき方、会社のメンタルヘルスケアに関する方針、会社内外の相談窓口に関する情報

【管理職に対して】会社のメンタルヘルスケアに関する方針、ストレスやメンタルヘルスケアに関する基礎知識、部下からの相談対応の仕方(話の聞き方や助言・情報提供の内容)、会社内外の相談窓次に関する情報

​などに関する教育委研修・情報提供を行うことが有用です。

特に管理職に対しては、管理職自身が抱え込みすぎないよう、管理職自身の相談窓口の存在について、そして労働者からの相談対応時における管理職としての対応の限界(心の問題や医学的な見解は専門家に委ね、現状把握と相談機関や人事との連携まで)について理解を求め、管理職自身が自分の役割を明確にするということが非常に重要です。



また少し違う切り口としては、部下からの相談対応時の聞き方について研修を行うことも

有用です。相談対応時には、相談者が相談しやすいように「傾聴(批判や対応者の意見は控え、本人の気持ちを受け止める聴き方)」姿勢について実習型の研修も有用です。



【予防策②】職場環境等の把握と改善

労働者の心の健康には、職場環境、作業環境、疲労の回復を図るための施設や設備、労働時間、仕事の質と量、ハラスメントを含む職場の人間関係、職場の組織及び人事労務管理体制等が影響を与えるものであり、職場レイアウトや作業方法、コミュニケーション、職場組織の改善などを通じた職場環境等の改善は、労働者の心の健康保持増進に効果的です。

このため、会社はメンタルヘルス不調の未然防止を図る観点から職場環境等の改善に取り組む必要があります。職場環境の改善のための一連の流れは以下の通りです。


1.職場環境等の評価と問題点の把握

労働者からの意見聴取やストレスチェックの結果、または社員の職場満足度調査の結果などから、具体的な職場環境の問題点を把握します。

厚生労働省の「こころの耳」のページでは、職場環境を改善するための調査・分析ツールが用意されていますので、こちらもご活用ください。


2.職場環境の改善

上記の調査等の結果により職場環境を評価し、労働時間制や業務範囲の見直し、労働者の適正や能力に合わせた配慮、相談窓口の設置など、具体的な対策を立案する機会を設けます。

その際、社内のワークショップ等の開催により他部門をまたいで意見交換するなどをして、労使が一体となった対策の検討を行うことも効果的です。





【対応策③】メンタルヘルス不調者への気づきと対応

メンタルヘルスケアにおいては、ストレス要因の除去や労働者のストレス予防策が重要ではあるものの、メンタルヘルス不調の労働者が発生した場合は、その早期発見と適切な対応を図る必要があります。

このため、会社は個人情報の保護にも留意しつつ、労働者や管理監督者、家族等からの相談に対して適切に対応できる体制を整備することが重要です。

​相談体制構築におけるポイントは以下の通りです。


①会社内外に相談に応じる窓口を整備し、労働者に対し活用を促進する

②管理職が部下からの自発的な相談に対応する際、特に個別の配慮が必要と思われる労働者から話を聞き、社内の保健スタッフや相談窓口への相談や受診など適切な情報を提供する

③社内の保健スタッフや管理職等が労働者の心の健康に関する情報を把握した場合、本人に対してその結果を提供するとともに、本人の同意を得て、会社の人事等に対して就業上の措置に必要な情報を提供する

④労働者の家族から労働者に関する相談があった際の対応窓口を広報誌などを利用して整備・周知する




【対応策④】職場復帰支援

メンタルヘルス不調により休業した労働者が円滑に職場復帰できるようにするため、以下の事項を行います。

①職場復帰プログラムの策定

②職場復帰プログラムの規定整備・周知

職場復帰プログラムには標準的な休業から職場復帰までの標準的な流れや関係者の役割について策定し、実際にはこのプログラムに基づき個別の労働者ごとに職場復帰計画を作成していきます。

個別の職場場復帰計画に関しては、人事制度、職場の労働負荷などの実情と労働者の回復程度との兼ね合いを見ながら進められるよう、無理のない復帰計画を策定する必要がありますが、これらは会社の人事部、現場の管理職、保健スタッフや産業医とが協力しながら策定することをお勧めします。

​職場復帰支援の一連の流れは以下の通りです。


【第1ステップ】

休業開始及び休業中のケアの段階。労働者からの診断書の提出管理者や保健スタッフ等によるケア、休業期間中の労働者の安心感情勢のための対応を図る

【第2ステップ】

主治医による職場復帰可能の判断の段階。労働者からの職場復帰の意思表示と復帰可能の診断書の提出、産業医による精査、など

【第3ステップ】

職場復帰の可否の判断と、職場復帰計画の作成の段階。情報の収集と評価、職場復帰についての判断と職場復帰計画の作成を行う

【第4ステップ】

最終的な職場復帰の決定の段階。労働者の状態の最終確認、就業上の配慮等に関する意見書の作成、会社による職場復帰の決定など

【第5ステップ】

​職場復帰後のフォローアップの段階。疾患の再発、新たな問題発生の有無の確認、勤務状況や業務遂行能力のj評価、職場復帰計画の見直し、職場環境の改善など





これらの一連の流れを念頭に、職場復帰プログラムを事前に策定しておくことが、いざメンタルヘルス不調者が発生した場合に「何を、どうしたらいいのか」分からない状態を未然に防ぐ対策となります。



弊事務所では、メンタルヘルス体制の構築、職場復帰プログラムの策定、社外のメンタルヘルス相談窓口としての役割までを包括的にご支援が可能です。

社員のメンタルヘルス対応について何か対策を取りたい、とお考えの会社様は、ぜひお気軽に弊事務所までご相談ください。

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