賃金と年次有給休暇の時効見直しが検討される
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  • 執筆者の写真藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

賃金と年次有給休暇の時効見直しが検討される

2020年4月、民法が改正されて債権の消滅時効が知った時から5年、あるいは権利を行使できる時から10年に統一されました。

一方で賃金等の請求権は民法の特別法という位置づけである「労働基準法」において、消滅時効は権利を行使できる時から2年、退職手当の消滅時効は5年と定められています。

​ しかし、2020年の民法改正により賃金等請求権も民法の改正に合わせて改正するべきであるとして、現在「賃金等請求権の消滅時効のあり方に関する検討会」において賃金等請求権の消滅時効の変更について議論がされています。



消滅時効変更の論点は、「賃金」「災害補償」「退職手当」「年休」「記録の保存義務」

現行の賃金再検討の消滅時効期間については、以下の通りです。

なお、これらの消滅時効にかかる起算点は実務運用上、または判例を踏まえて「客観的起算点」、すなわち権利が発生した時となっています。



賃金請求権の時効は見直しの方向へ

既に述べたとおり、労働基準法に定める賃金検討の消滅時効については厚生労働省が主催する「賃金等請求権の消滅時効のあり方に関する検討会」において議論が進められています。

​ 直近の検討会においては、以下の点が整理されています(一部「賃金等請求権の消滅時効のあり方について」令和元年7月1日 抜粋)。



【賃金請求権の消滅時効】

・労基法制定時に、民法の短期消滅時効の1年では労働者保護にかけることを踏まえて2年とした経緯があり、今回の民法の改正により短期消滅時効が廃止されたことで改めて労基法上の賃金請求権の消滅時効期間を2年とする合理性を検証する必要がある。

・現行の2年の消滅時効のもとでは、未払い賃金を請求した区でもできないまま時効が経過して債権が消滅してしまっている事例などの現実の問題等もあると考えられる。

・仮に消滅時効が延長されれば、企業実務を変わらざるを得ず奮闘の抑制に資するため望ましい企業行動を促す可能性がある。

以上のことを踏まえると、現行の労基法上の賃金請求権の消滅時効期間を2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないかと考えられる。

【年次有給休暇請求権】

年休に関してはそもそも年休権が発生した年の中で取得することが想定されており、仮に賃金請求権の消滅時効期間と合わせてこの根に有給休暇請求権の消滅時効を延長した場合、年休の主旨と合致せず取得率向上という政策の方向性に逆行してしまう。

したがって、年次有給休暇の請求権は賃金請求権と同様の取り扱いを行う必要性がないのではないかと意見一致。

【記録の保存】

現行の労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存期間は使用者側の負担を併せ考えて3年と定められています。

記録の保存については、刑事訴訟法の公訴時効の3年との関係や、記録の保存年限の規定の主旨や起業コストなどを踏まえつつ賃金請求権の消滅時効の期間のあり方と合わせて検討していく。





今後は労働政策審議会において消滅時効のあり方が議論される

「賃金請求権の消滅時効のあり方に関する検討会」において、賃金請求権の消滅時効についての要点が上記のように整理されました。

そして仮に見直しが行われる際は、働き方改革関連法案の施行に伴う企業の労務管理負担の増大に一定の配慮をしつつ、具体的な内容、具体的な時期については労働政策審議会において検討されることになります。

労働政策審議会は厚生労働省設置法第9条に基づき、厚生労働大臣等の諮問に応じて、労働政策に関する重要事項の調査審議を行う会議です。



議事録や資料はこちらで確認することもできますので、ご参考になさってください。

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