第18回:老舗店と新興店の違いを考える
- s.takashi

- 8月12日
- 読了時間: 3分
更新日:10月16日
酷暑の続くある日、スタミナをつけようと鰻を食べることを思い立ちました。近所の老舗店のメニューを確認すると、うな重が一人前5,000円。気軽に手を出せる価格ではなく、諦めかけていたところ、「鰻の成瀬」(以下、成瀬)というチェーン店が、うな重を手頃な価格で提供しているという話を耳にしました。
インターネットでメニューを確認すると、並が1,600円、上が1,900円、特上が3,400円。これなら試してみる価値があると思い、早速暖簾をくぐってみました。
実際に食べてみると、並でも十分に美味しく、私の「うなぎ欲」をしっかりと満たしてくれました。この価格であれば、また気軽に訪れることができそうだと感じながら店を後にしました。
そのときふと、「老舗ではうな重が5,000円もするのに、なぜ成瀬はここまで安く提供できるのだろうか?」という疑問が頭をよぎりました。
調べてみると、その答えは成瀬の徹底した合理化にありました。
成瀬で使用されているのは、中国などで養殖されたニホンウナギ。これを冷凍で輸入することで、食材費を大幅に抑えています。
店舗では職人による手焼きではなく、機械焼きを採用。調理の均一化と効率化を図り、人件費を削減しています。
さらに、全国に250店舗以上を展開することでスケールメリットを実現。食材を大量に仕入れ、物流コストも抑制しています。
こうした取り組みにより、成瀬の原価率は約40%に抑えられているとのことです。利用者数も増加傾向にあり、集客力の向上がさらなるスケールメリットを生んでいます。
一方、地元の老舗店はどうでしょうか。
老舗店では、うな重一人前が5,000円前後と高価格帯に位置づけられています。原価率は一般的に約60%とされており、成瀬と比べて高めです。
しかし、老舗店にはそれだけの価値があります。
店内には重厚な調度品が並び、落ち着いた雰囲気が漂っています。
炭火で焼かれたうなぎの香ばしさが店内に広がり、食欲をそそります。
タレは代々受け継がれた秘伝の味。長年の歴史が育んだ深みがあります。
使用するうなぎはすべて国産。熟練の職人が一尾ずつ丁寧に焼き上げています。
こうした品質と伝統に裏打ちされた信頼が、老舗店のブランド力を支えています。リピーターも多く、集客数がそれほど多くなくても、高価格設定によって安定した収益を確保できているのです。
効率と価格で勝負する成瀬。
伝統と味・品質で勝負する老舗店。
どちらも「うなぎ」という同じ食材を扱いながら、まったく異なる戦略で私たちの食欲を満たしてくれています。
老舗ブランドが根付く市場において、新規事業者が勝負を挑むには、成瀬のような徹底した合理化と差別化戦略が有効であることを、今回の体験を通じて実感しました。
以上


