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第10回:ファイブフォース分析
事業の再構築や新規事業の立ち上げの検討時に陥りがちな思考として、物事が自社に都合よく進むことを想定した次のようなものが挙げられます。 ・自分達が狙う業界/市場には、競合企業は存在しない。たとえ存在していたとしても、たいしたことはないはずだ。 ・だから、顧客は自分達の製品/サービスを必ず気に入ってくれるはずだ。そして、顧客は自分達の製品/サービスを、自分達の言い値で購入してくれるはずだ。 ・その結果、売上と収益は想定通りに伸びていき、自分達が計画した事業の再構築や新規事業の立ち上げは必ず成功するはずだ。 果たして物事は、上記のようにうまく進んでいくのでしょうか。 残念ながら、物事が想定通りに進んでいくことは少数事例に留まります。往々にして想定外の事象が起こり、結果として見込んでいた売上と収益を確保することができず、途中で計画が頓挫してしまうケースが大半を占めています。想定外の事象を想定内の事象にするために、自社が狙う業界/市場について事前に十分な調査・検討を行うことが重要になります。 そこで今回は、上記のような自己満足的な計画に陥る

s.takashi
2024年4月25日読了時間: 4分


第9回:数字から見た事業の可能性 その2
前回ご紹介した基本フレームワークにプロットされた数字は、我々にどのようなことを物語っているのでしょうか。 1.成長マトリックス 成長マトリックスにおける各戦略の成功率は、次のようになっていました。 ■ 市場浸透戦略(既存製品・サービスを既存市場で販売): 成功率 70% ■ 新市場開拓戦略(既存製品・サービスを新市場で販売): 成功率 56% ■ 新製品開発戦略(新製品・サービスを既存市場で販売): 成功率 20% ■ 多角化戦略(新製品・サービスを新市場で販売): 成功率 9% まず、既に関係が構築されている既存顧客に対し、既存技術に関連した製品を販売していく市場浸透戦略では、成功率が7割と高くなっています。 また、既に販売実績がある製品を新たな顧客に販売する新市場開拓戦略についても、成功率は5割強と高くなっています。 一方、実績のない新製品を既存顧客に販売する新製品開発戦略は、既に関係が構築されている既存顧客を対象にしていることから、敷居は高くないように見えます。 しかし、顧客にとって

s.takashi
2024年3月16日読了時間: 4分


第8回:数字から見た事業の可能性 その1
今回は事業再構築や新規事業立ち上げの可能性について、数字の視点から 2回に分けて考えてみます。 データとしては少し古くなりますが、 2004年3月11日 第1刷発行の『金融のプロが見たベンチャー・ビジネス「成功と失敗」の分岐点』(著者:UFJベンチャー育成基金 松井憲一氏、発行所:ダイヤモンド社)において、UFJベンチャー育成基金(注)が実施した債務保証85件(対象期間:平成7年~平成13年)に関する事例が紹介されています(以下、同書)。 (注)2007年から財団法人三菱UFJ技術育成財団へと財団名を変更しています。 同書では 85件の成功と失敗の事例を、企業診断の基本フレームワークである「イゴール・アンゾフの成長マトリックス」(以下、成長マトリックス)と「マイケル・ポーターの競争戦略」(以下、競争戦略)を使って分類しています。成功事例と失敗事例を基本フレームワークで集計した公開情報は稀有であるため、皆様にご紹介させていただきます。ご興味のある方は、ぜひ同書をご覧ください。 まずは前知識として、成長マトリックスと競争戦略について触

s.takashi
2024年1月29日読了時間: 3分


第5回:イノベーションのジレンマを身近な事例で考えてみる
前回は、インシュリン市場におけるイーライ・リリー社とノボ社の開発競争を採りあげ、イノベーションのジレンマによってCPF(Customer Problem Fit)とPSF(Problem Solution Fit)の前提が覆ってしまう事例に触れました。 今回は、そのイノベーションのジレンマとPSF(Problem Solution Fit)、SPF(Solution Product Fit)の関係について、電気ポットと電気ケトルというごく身近な商品の事例で考えてみたいと思います。 お茶やコーヒー等を飲みたい時、ひと昔前でしたらガスコンロにやかん(ケトル)をかけてお湯を沸かし、魔法瓶に移して保温していました。でも、魔法瓶に移したお湯は、時間が経つとぬるくなってしまうというのが一般的でした。 そのような状況が、電気ポットの出現により一変しました。電気ポット1台があれば、お湯を沸かすことができ、そのまま保温できてお湯はずっと熱いまま。大変重宝され、瞬く間に各家庭に普及していきました。 しかし、電気ポット市場が飽和化していくにつれ、メーカー間の開発競争は

s.takashi
2023年9月25日読了時間: 4分


第4回:CPF・PSFとイノベーションのジレンマ
今回は、クレイトン・クリステンセン教授の名著「イノベーションのジレンマ」(翔泳社)に記載されている「インシュリンの製品ライフサイクルにおける性能の供給過剰」(同書P261-P265)を採りあげ、カスタマー・プロブレム・フィット(CPF)とプロブレム・ソリューション・フィット(PSF)の変遷とその見極めの難しさについて考えてみます。 当該事例は、インシュリンという特殊製品市場を舞台に、イーライ・リリー社とノボ社において展開された開発競争です。顧客と顧客が抱える問題・課題、そしてその解決策の在り方を考える上で思わず唸ってしまう、とても興味深い事例です。 インシュリン市場では当初、イーライ・リリー社がリーダーとして君臨しており、同社のターゲット顧客は糖尿病患者の治療に従事する内分泌専門医でした。同専門医の課題は病状の重い患者の治療であり、より純度の高いインシュリンを求めていました。イーライ・リリー社はその課題を解決すべく、インシュリンの純度の向上に注力しました。しかし、より純度の高いインシュリンを必要とするのは病状の重い患者で、その糖尿病患者全体に占め

s.takashi
2023年8月11日読了時間: 4分


第3回:フィット・ジャーニーの視点からA社の行動を振り返る
今回は、A社がフィット・ジャーニーの流れに沿って、どのように行動していくことが望ましかったのかについて考えてみます。 (1) フィット・ジャーニーのおさらい フィット・ジャーニーは、簡便的に次のように表すことができます。 事業の再構築や新規事業を進めるにあたり、顧客、顧客の問題、その問題に対する解決策、その解決策を実行するための製品、そして、その製品の上市へと、ステップを順に踏んでいくことが重要です。フィット・ジャーニーに沿って行動していくことで、筋道を立てて論理的に検討を進めていくことができます。 各ステップにかける時間は事案によって異なるため、どのくらいの時間をかければよいのかを明言することはできませんが、論理に重きを置き過ぎてしまうと顧客の問題から視点が逸れてしまい、本筋ではない方向に向かってしまうことが往々にして起きます。また、途中でステップを飛ばしてしまうと論理が飛躍して辻褄が合わなくなり、そうなると自分達の理屈で辻褄合わせを行うことになり、最終的に論理の矛盾と破綻を来すことになってしまいます。 (2) A社が失敗してしまった事由...

s.takashi
2023年8月10日読了時間: 4分


第2回:フィット・ジャーニーの視点から失敗事例を考えてみる
今月は、我々がこれまでに経験・見聞してきた事業再構築や新規事業立ち上げの失敗事例について、フィット・ジャーニーの視点から考えてみたいと思います。 ■ A社の事例 (1)独りよがりの事業計画 中堅企業A社は、顧客から請け負ったシステム開発を主業とするSystem Integratorです。請負ビジネスは受注ができなければ0、できれば100という0-100の狩猟型ビジネスであり、収益に大きな波があります。 かねてから収益の平準化を図りたいと考えていたA社はSaaS(Software as a Service)に着目し、サブスクリプション型サービス(以下、サブスク)事業へ乗り出すことを決定しました。 A社がSaaSによるサブスク事業に着目した主な理由は次の通りです。 想定されるA社のメリット インターネット上で顧客にソフトウェアを定額で貸し出すことにより、毎月一定の利用料金を受け得ることができ、収益の安定・平準化を図ることが可能になる。 想定される顧客のメリット 自社で高額のソフトウェアを購入しようとすると、一度に多額の資金が必要になるが、サブスクであ

s.takashi
2023年4月19日読了時間: 4分


第1回:フィット・ジャーニー
ここ数年、社会環境が激変する中で時代の要請に応えるべく、書店の店頭に新規事業に関する幾多の書籍が並ぶようになりました。いずれも著者の知見と経験に裏打ちされたノウハウが散りばめられた秀逸本であり、どれを選んで読んだらいいのかと戸惑うことが多々あります。 そのような中で中小企業診断士としての私自身の経験を踏まえ、事業の再構築や新規事業の立ち上げ(以下、事業再構築等)を検討・準備する際に有用と思われるフレームワークやメソッドについて考えてみたいと思います。 初回は、事業再構築等の検討・準備において、マイルストーンとして活用したい「フィット・ジャーニー(Fit Journey)」というフレームワークをご紹介します。 多くの方がフィット・ジャーニーという言葉を初めて目にされたのではないかと思いますが、図示すると次のような流れになります。 横文字が多く並んでしまいましたが、フィットは適合している、ジャーニーは旅という意味です。 まず、カスタマー・プロブレム・フィット(Customer Problem Fit)フェーズでは、顧客と問題・課題がフィットしているの

s.takashi
2023年3月13日読了時間: 3分
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